約束の日に、約束の本を 工場長 入江勉

作業を見る、人間を見る

工場長としては、まずは作業確認です。通常にライン生産ができているかを、ずっと回ってチェック。足りないところは、モノや人を手配したり、自分が手伝ったりします。
あとは、人を見ています。仕事ぶりを見ていると、何となく感じることがあるんです。その機械に向いているかどうか、トラブルの対処方法とか、調子がいいときの動きとか、セットアップのやり方や時間など、見るともなく見ています。
実は今、ちょうど若い人たちにバトンタッチの時期というか、オペレーターが高齢化してきているので、底上げをして、技術を覚えてもらわないといけないというところなんです。この人は2、3年後、どこにつけるかの方向性を見ながら、適材適所を探っています。
この工場は、創業者の元会長が設計から考えていて、スムーズに仕事が流れるよう入口と出口を別にしたり、ラインを縦1本に置けるようにしたと聞いています。それには敷地の広さも必要なので、この地を選んだらしいですね。都区内などでは、場所に限りがあるので入り組んで機械が入っているところが多いですが、ここはそんなこともなくスッキリしています。
当社の特徴的なこととして、「機械がきれい」というのは、よく言われます。毎日掃除するので、私たちにとっては当たり前の状態なのですが。来る人、来る人みんなが、きれいと言いますね。
それから当社の丁合も特徴的です。薄物でも場所によっては全然貼り込まないのを見て、みなさん驚かれます。他社さんは、ほとんど貼り込んでやっているようで、感心されます。

悪い本を外に出さない

雑誌の最終工程を預かる会社として、約束の日に仕上げるという意識は、社内全体に浸透しています。今のところ、悪い本が返ってくるということはありません。社内的ミスも年に1回あるかないかで、それも完全に社内処理されます。「ここまでの本をつくらなければ駄目」という意識は、営業からオペレーターまで徹底しています。
雑誌の製本自体は、当社にとっては一番慣れた仕事です。今はカメラも付いて管理していますが、人の手で載せているので、昔は乱丁が一番怖い事故でした。今は、社内のどこの機械でやっても、ほぼうまくできます。ただ『ジャンプ』関係は、工場1階と決まっています。ずっと同じものをやっていると、機械にもなじみが出る(笑)。この間、たまたま2階でやったら、なかなか回りませんでした。紙も選んでいるのかもしれない。雑誌に関しては、今は紙の厚みもさほど変わらないし、特にやりづらくはないですね。逆に約款とか、ムック本の方が、傷やシワなどが非常にシビアなので難しいです。
私は中途入社ですが、上司にかわいがってもらい、やったこともない機械につけられてチャンスを与えてもらえたから、今がある。そういう時代だったと言えば、それまでですが、今は逆に、教えるときは一から十までみんな教えてしまうから、逆に覚えづらいし、考えにくいこともあるのかもしれません。自分が育ててもらったように、次の時代を担う人を育てていきたいと思っています。